薬王堂気まぐれ通信使№840  2022-10-18
Yakuoudo Capricious Communications Satellite

9月25日、広島県と広島県薬剤師会が主催する第57回・「薬草に親しむ会」が県北の深入山セラピーロードで開催されました。
コロナ禍で参加者の人数制限が行われましたが熱心な方々が集い楽しい一時を過ごしました。


後方が深入山


深入山は初春に山焼きをします。
かつては牛を放牧していましたが今は平原の環境を維持するために行っているとのことです。
私は講師の一人として参加しました。
約15人の方々と秋の深入山山麓を歩いてみました
一般植物も含め目についた順に載せてみましょう!

オオケタデ
ワレモコウ
ヤマジノホトトギス
キキョウ
ママコナ
ミヤマガマズミ
サイヨウシャジン
オケラ
カワラナデシコ
ヨツバシオガマ
オミナエシ
サワヒヨドリ
イナカギク
カナビキソウ 
フシグロ フシグロ 
コウゾリナ
マツムシソウ
ノギラン
シュロソウ 
エゾノギシギシ
リンドウ
キセルアザミ
ヤマラッキョウ
ウメバチソウ
センブリ
ウツボグサ
ヤドリギ
などなど・・

平原が切れるところからミズナラやコナラなどが林を形成していました。
これらの植物で薬用にされるものについてお話ししました。


キキョウ咲く深入山

先ずはキキョウ、根を桔梗として咳止めや痰を取り除くために使用し浅田飴や龍角散といった医薬品にも配剤されています。
最近ではコロナ後遺症で咳が何時までも止まない場合に桔梗が配剤された薬が頻用されているようです。


オケラ

オケラはキク科植物で根を昔から薬用にしています。
煎じて服用することで消化機能を高めます。
六君子湯や人参湯といった漢方処方に配剤されています。

サイヨウシャジンツリガネニンジンによく似た植物で根を沙參として薬用にします。
キキョウ科の植物で桔梗と同じく主に咳止めに使用されます。

カワラナデシコは種を瞿麥子(クバクシ)といい配剤された漢方薬は利尿や生理不順に用いることがあります。

オミナエシの根は清熱消炎作用があり化膿疾患に用います。

ワレモコウの根茎を地楡(チユ)といい止血作用があります。

ウツボグサの全草を夏枯草といい膀胱炎や泌尿器疾患で浮腫みのある場合に用います。


落ちたヤドリギの枝先を拾われて・・


参加者の方がヤドリギの枝が落ちていたものを拾ってきました。
枝の先に赤くなりかけた実が付いていました。
先週の台風の影響でミズナラに着生していたものが落下したのでしょう。
ヤドリギは桑寄生(ソウキセイ)という名で薬用にされます。
本来は桑の枝に着生するオオバヤドリギのことを桑寄生と呼んだのでしょうが日本ではヤドリギを桑寄生に当てています。
ヤドリギの実に毒はないことを告げて数人の方に口に含んでいただきました。
感想は「少し甘くヌルっとした種があります!」というものでした。
冬になるとレンジャクなど鳥が好んで実を食べ線維のある種は未消化のまま糞と一緒に排便されて他の木の枝に絡まります。
そこから宿主に根を張り発芽して生育範囲を広げると言ったしたたかさをヤドリギは持ち合わせています。

センブリは千回ふり出しても苦みが残ることからその名前がつきました。
胃腸薬として日本の民間薬として長く使われてきています。


フシグロの種子

ナデシコ科のフシグロが実を付けていました。
中には小さな種子が入っており昔の医療を書いた本(金匱要略)に記載されている王不留行(オウフルコウ)であろうと言われています。
王不留行はもう一つ近縁種のドウカンソウの種子との説もあります。
帰宅後に二つの種子を比較してみました。
ドウカンソウの種子はフシグロより少し大きいようです。
どちらの種子にも表面に細かい突起物があるようです。
フシグロ種子顕微鏡で覗いてみました。


広島漢方研究会の仲間たちと

山は秋たけなわ、観察会終了後に気の合う友人と深入山中腹まで登ってみました。
中国山地は心地よい秋風が吹いていましたね。
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